梁田 真樹子(読売新聞)/ボトムアップで作る!報道デジタルコンテンツ

2025年12月2日に PYNT竹橋で開催されたイベント「災害と事故をめぐる可視化:報道・デザイン・建築をつなぐ対話」における、読売新聞東京本社 DX統括部主任・梁田 真樹子さんの講演です。能登半島地震などの実例をもとに、報道デジタルコンテンツがどのように現場の自発性から生まれているか、そしてこれから何を変えるべきかを語ります。


読売新聞の東京本社 DX統括部というところで勤務しております、梁田と申します。今日はこのような場でお話しさせていただくことを大変光栄に存じます。

先ほど日経新聞の久能さんが非常に最先端の技術のお話をされたところで、主催の矢崎さんからは「私からは組織論・メディア論に寄った話をしてくれ」というお話をいただきました。ただ、先ほど伺いながらアイデアとして重なる、共感できることも多いなと思っておりましたので、先ほどの久能さんの素晴らしい発表と対照させながらお聞きいただくといいのかなと思います。

一緒に考えたい3つのポイント

まず、私の発表を通じて一緒に考えていただきたいポイントが3つあります。

① 報道機関自体が「データの塊」である

記者が現場に行って取材をして情報を集めてくる。当局の発表なども含めて集めてくる。それをどのように活用するのか。

これを考える際に、2つの軸があるのではないかと最近考えています。1つは、災害や事故が起こったとき、皆さん「何が起きているんだ」「どこがどうなっているんだ」といち早く知りたいと思われますよね。現地にいる方はなおさらです。そうしたニーズに応えるために、まずいち早く伝える――フローとしてどう可視化するか。

2つ目は、ある程度時間が経ったときに、「なぜそういうことが起きたのか」「実際のところどうなったのか」「二度と起こさないためにはどうすればいいのか」を学ぶための――ストックとしてどう見せていくか。この2方向を考えることが、今は求められているのではないかと考えています。

② 有志で始められる、ということの両面

この後ご紹介する読売新聞の事例は、本当に有志というか、草の根でやっているものばかりです。裏を返すと、ディレクションするデスクがいないということです。

現場でデジタルで伝えるべきだと思っている記者が、「やらねば」という使命感を持って自分で技術を学んで伝えている。その自発性があるからこそできる面がある一方で、特に読売新聞は紙を大事にしている新聞で、ありがたいことに部数としては全国で一番を保たせていただいている。逆に言えば、紙で原稿を出して報じるというシステムが非常に強固で、そこに新しいものをどう組み込んでいくかがなかなか難しい。試行錯誤しても乗っからず、現場の自発性頼りで出している面が良くも悪くも強い。その状況のままでいいのだろうか、という点を問いたいということです。

③ 個人が「知っておくべきこと」にどう導くか

1人1人がスマホでネットに接続できる状態になり、情報を個人で取捨選択して摂取する局面がすごく増えている。だからこそ、「皆さんに知っておいてほしいこと」「知っておくべきこと」を報じる機関として、どうやって改めてその役割を果たしていけるのか。それが最初に挙げた学びや再発見にもつながるのかもしれませんが、どうやってそこにたどり着けるのか。そこに思いを巡らせながら考えていければと思います。

自己紹介

20年ちょっと、読売新聞でずっと記者として働いておりました。地方から海外、永田町なども経験している、コテコテの記者です。現在は DX に携わっています。

なぜそうなったかというと、1つは、社内で2021年4月に有志の勉強会を立ち上げた経緯があります。今も続けていますが、「デジタル報道をやりたい」という人、それから編集部門でなくてもさまざまなスキルやノウハウを持った人たちがいるので、そういう人たちのシナジーを生めればと。まずは社内の横のつながりを作ることが大切なのではないかということで始めました。

次が、パリ支局にいたときのことです。ロシアの侵略が始まったウクライナに一度だけ現地に入る機会があり、そのとき撮った写真をもとに、東京大学で地理情報や3Dモデルを使ってウクライナの戦況についてデジタルマップを作っていらした渡邉英徳先生や、社内のデザイナーさんに協力をいただいてデジタルコンテンツを作りました。ありがたいことに、いろいろな方に見ていただけました。

そして、そのウクライナのコンテンツを作ったこともあって、「もっといろいろな記者が学ぶのがいいのではないか」という話になり、2023年度から、編集やデザインを専門にしている社員が手を挙げるなり選ばれるなりして学ぶという仕組みが始まりました。私は言い出しっぺなので「お前が入れ」ということで第1期生として参加し、取材をしながら作れるノーコードのツールなどの使い方を学んで、現在に至るという次第です。

事例1. 能登半島地震(2024年元日)

ここからは具体的なコンテンツをお示ししながら、最初に提示した3つのポイントを考えていければと思います。

2024年の元日に起きた能登半島地震では、かなりいろいろなコンテンツを作りましたが、最も象徴的だったのが被災状況マップです。

右側にあるのが記者やカメラマンが現地で撮った写真。それを左側のデジタルマップ上に落として、場所とそこの様子を対比させながら見せていく作りになっています。元日以降、何日も記者が入っていますので、写真が撮れるたびに東京のカメラマンの後方支援部隊がアップしながら作っていく作業を、1週間ほど続けました。

これは、渡邉先生のところで学んだメンバー(1期生)が中心になって作ったものです。経緯は、うちの人事部が出しているブログにも書いてありますので、ご関心のある方はぜひご覧ください。

2023年4月・5月から「読売・渡邉研」が発足して勉強しているという土台がありました。そこで、この地図につながる ArcGIS という地理情報のプラットフォームで、地図と写真と3Dなどを使いながらどうスクロリーテリングをしていくかという技術を学んでいた。そのベースがあったところに、元日にこの大地震が起きてしまった。

たまたま元日に出勤していた渡邉研メンバーのカメラマンが「これは何かやった方がいいぞ」「ArcGIS に写真を落としていけば何かできるんじゃないか」ということで始まり、そこにこれまたたまたま出勤していたデザイン部のメンバー、そして緊急事態だということで出勤したけれど社内ではまだそんなにやることがなかったという社会部の記者――いずれも読売・渡邉研のメンバーが集まった。

地方支局(輪島など)の現地から上がってくる写真を端末で見ながら、「大体どのあたりの位置なんだ」というのを現地に聞きながら、Google ストリートビューなどで「ここだ」と自らロケーションを特定して、初日は大体15枚ほどをプロットし、元日の夜11時ごろ、つまり地震から7時間後に公開しました。

私自身はというと、当日はパリからエルサレムへ、ガザの紛争取材の応援で出張中でした。制作には関わっていませんが、元日から渡邉先生に連絡をして「今こんなものを先生のところで勉強しているメンバーで作っているから、拡散を手伝ってください」とお願いをするなど、そういう意味では総力で作ったという感じです。

何せ元日で世の中の動きが鈍い時でしたし、「どうなっているんだ」というところに答えるコンテンツだったのだと思います。ありがたいことに、地震から数日の間に非常に多くの方に見ていただけて、「現地はこんなことになっているのか」を知っていただくための素材になったのかなと思います。

さらに下にスクロールしていくと、読売・渡邉研のメンバーで、科学部でサイエンスを担当し、元々データジャーナリズムに関心を持っていた記者が、外部企業が出している被害状況をまとめたデータを取ってきて、その企業の許可を取って位置をプロットし、「ここは津波の被害を受けた」「ここは浸水がひどい」といった情報をフローとして可視化するものを加えていきました。

まずは有志で始まり、どんどん情報を足して「これも乗せたらいいんじゃないか」という感じで膨らませていった。本当にそういう感じのコンテンツで、それが非常に多くの方にご覧いただけるものになった、という例です。

能登半島地震「証言」

その流れで出したのが「能登半島地震 証言」です。原理は同じで、地図に落とす。ただし落とすものが人の証言とその方の写真です。もちろん「こういう趣旨でデジタルコンテンツに載せます」と了解を取った上で写真を撮らせていただき、位置情報をつけて地図に落としています。関心のある方のところをクリックすると、その人の証言が読める形です。

ここで一番の工夫どころは、メモを集めるのを自動化したことです。今まで取材に行くと、正直に言って個々の記者が取材したものをメールで共有して以上、だったのですが、それだと蓄積していかない。そこで、フォーマットを共通化して「こういうタイトルで送ると自動的にこのチームに溜まります」という仕組みを、社内の詳しい方に協力いただいて作りました。

証言、その方の氏名、場所などを全部一覧で収集し、証言の内容が事実と整合しているかも精査しながら、渡邉研のメンバーが中心になって作ったものです。証言も、ある意味で新聞社が持っているデータなので、こういう活かし方ができるという例です。

3Dモデル

こちらは3Dモデルです。左は象徴的に語られた輪島の朝市。地震の翌日1月2日に撮った写真から、被害がより詳細に分かる立体モデルを作っています。右は沿岸の小さな島で、崩落している様子を3Dモデル化し、なおかつ時系列で比べられるようにしたものです。これも写真部のカメラマンが、3D に非常に入れ込んでいて、自分で努力して作っているコンテンツです。

想像していなかった役割

今年(2025年)1月、石川県で能登半島地震から1年ということで、お世話になっている渡邉先生が企画に関わったシンポジウムがありました。そこに関わった記者・カメラマンが呼ばれ、実際にこれらのコンテンツを展示したり、災害を考えるワークショップで3Dモデルが使われたりして、直接読者の方たちとコミュニケーションする機会が得られました。

また石川県の方からは、「発災直後の様子はなかなか自分たちでは記録しきれない」という話がありました。現地の方たちは目の前のことで精一杯ですから。後で振り返るための記録を持っているのは、むしろ外部の私たちのようなところで、そこで何か協力できないか、と。

自分たちが作っているコンテンツには、それまで想像していなかったような役割・使い方があるのかもしれない。それをとても学ばされた災害でした。

事例2. 岩手・大船渡の山林火災(2025年2〜3月)

今年2月から3月に起きた大船渡の山林火災では、熱マップを、渡邉研2年目(2024年度)に学んだ記者たちが作りました。

これも能登の被災状況マップと同じ ArcGIS を使っています。作りは単純と言えば単純で、ある日の火災が発生している地点をプロットしたものを、当日の記事での説明と合わせてアーカイブしていく感じです。何日か分、ずっと更新していました。

特徴は制作過程が非常に迅速だったことです。制作した記者(今は水戸にいます)に聞いたところ、「たまたま授業で勉強したのがあった」と。何を勉強したかというと、NASA が出している、発火地点の温度を衛星画像から読み取って「どこが熱くなっているから火災が起きている」――つまり戦乱で何か攻撃が起きている、あるいは山林火災が起きているのではないか――という位置を特定できるツール(FIRMS)です。

「これを使えば山林火災の様子を伝えるのに役立てられるかもしれない」と思いつき、すぐ作業をして公開したという話でした。

ただ勉強しただけでは、すぐこういう発想にはならないかもしれません。まず前例があった。FIRMS を使ったコンテンツは、1期生がウクライナの戦況を説明する Web コンテンツで使った実績がありました。また、地図に落とすこと自体は、能登の被災状況マップの大船渡バージョンをすでに出していたりもした。そういう「こういうことができるんだ」という知識の積み上げがあった上で、「あ、これか」と納得して「やってみよう」となった。

なおかつ2期生のメンバー複数が関わって、まさに勝手にやって、デスクには「こういうの出します」「分かった、出せ」という二つ返事だったそうです。これもやはり、現場の記者が「何かやろう」「何かやらなきゃ」ということで実現した企画だと言えます。

反響として嬉しかったのは、大船渡市役所の方がこれを見つけてくださって、「市民の皆さんへの全体的な情報提供として役立つから」ということで、リンクを貼らせてほしいと現地から要請があり、一時期このリンクが掲載されていたことです。現に困っている方たちにも役に立つと感じてもらえたのは、作り手として非常にありがたいことでした。

事例3. 道路陥没(2025年)

今年1月、埼玉県八潮市でいきなり県道が陥没して死傷者が出るという事故がありました。そのときもまず、能登で3Dを作ったメンバーが陥没の様子を上から空撮して3Dモデルを作るなど、「何かデータを使って今起きている事故・災害を何とかしよう」という動きが定着していました。

ここでご紹介する「陥没・空洞発生マップ」は、もう少しスパンの長いものです。八潮で陥没が起き、全国でも問題になっているということで、全国の状況の分析をしようという話が出ました。それをやりつつ、担当した記者たちは「そうは言っても、皆さんやっぱり自分の街がどうなのか知りたいんですよね」と。

紙面ではどうしても、網羅的なものを載せることはできても、「ここはどうだ、ここはどうだ」と一件ずつ全部載せるのはスペース的にかなり難しい。「自分の街はどうなんだ」を示すには、デジタルの空間的な再現があった方がいい――ということでプロジェクトが始まりました。

取材はかなり地道でした。各地方整備局(国交省が持つ地方の出先機関)に、これまでの陥没など道路の危ない状況についてまとめた資料があるので、それを出してくれと情報公開請求をかけ、そこから根性でクレンジング(データを整える作業)をやったということです。

余談ですが、どんなクレンジングだったか。ここにいらっしゃる方は「あるある」と思われるかもしれませんが、役所の資料は未だに PDF で、しかも読み取り不可のまま出ることが多いんですよね。整形するツールも今はあるはずですが、それでも人手が足りなかったり、その技術に十分習熟していなかったりすると怖い。ということで、必要な情報を手作業で、しかも1000枚分整えたそうです。

さらに地図に落とすときに致命的だったのが、緯度経度の情報がなかったこと。「どこどこ地点から何メートル・何キロ」といった記述や住所、断片情報から、あるいは写真を見て Google Earth で「ここだ」と特定したりと、本当に根性のデータクレンジング作業を実質2人でやっていたということです。こういう事例が広まれば「データを整えることの意味」も伝わると思うので、ぜひ何かできればいいなと思ったところでした。

支える仕組み

記者が自分で勉強して自発的に作ったのがベースではありますが、そういう動きが広まりつつあるので、それを支える仕組みも徐々にでき始めています。

1つは、どう読まれたかを分析するダッシュボードです。編集ではなく、今私が所属している DX・イノベーションを担当する部署で手がけてきました。ネットで読んだ方の履歴が残るので、それを分析して「この記事はこのくらいの時間読まれたから、読了率が高くきちんと読まれたんだな」「この記事は割と若い方が読んでいる」といったフィードバックを得られる仕組みができています。

もう1つは、地図ツールの内製です。道路陥没のものも含め、ArcGIS という外部ツールを使っています。ノーコードでできるので非常に便利で、だからこそやる人が増えたという面も大いにあるのですが、やり続けていると、自分たちが持っている貴重な取材データを外部に預け続けることにもなってしまう。

そこで、自分たちでできることをある程度増やした方がいいのではないかということで、渡邉研にいたデザイナーが、位置情報や写真(WordPress にアップした URL)、写真の解説などのテキスト情報を Excel に上げれば、ビジュアルに落とせるようなマクロを開発しました。今、それを徐々に使っていこうという動きが始まったところです。

第1作目は、写真部がドローンを使って出している「ソラレポ」という連載です。まさに被災状況マップを作ったような人たちがやっていて、定期的にコンテンツを作るので、まずそこで実践していこうという感じです。自分たちである程度標準化したものを作っていこうという動きが出てきている、というのが今の現状です。

考察 ― 変わらないこと、変わらなければいけないこと

3つのケースを振り返って、最初に提示した3つのポイントを改めて考えてみます。

変わらないこと:足で稼いだ情報と、記者の目利き能力

能登半島地震のマップがなぜあれほど広まったかと言えば、やはり確かな情報だったことは間違いなくあると思います。実際に現地で取材をした記者が撮った写真。多少、被害の少ない地点だったとしても、「この辺でもこんなことになっているんだ」と確かな情報として得られる。その信頼性が、広まった背景にあることは間違いない。

先ほど久能さんの説明にもあったようにフェイクの画像が出回る中で、「新聞社がこうやって出しているものは間違いないだろう、記者のクレジットも出ているし」というところは、今の世の中だからこそ逆に価値が増している面があるのではないかと思います。

記者の目利き能力もそうです。たとえば陥没マップのように「きっとこういう情報が欲しいだろう」と先回りして考える。どの情報を出すべきかは、記者がセンスで考える部分が大いにある。それを体系化されたものとしてきちんと重視していくことは、変わらず重要なのだろうということです。

変わらなければいけないこと① フローの管理とデスクの役割

発生直後にどうするかというフローの管理という意味では、今は文章を書くだけ、写真を撮るだけではなく、インターネット空間で即時に情報が出て、なおかつ音声もある、動画もある、3Dもある。いろいろな技術がある中で、それらの概要をきちんと知った上で「ここはこれで行こう」とディレクションができ、なおかつ工程管理ができる――プロジェクトマネージャーとしてのデスクが、これからは本当に必要なのではないか。デスクに求められる役割や必要なスキルが、見直しの時期に来ているのではないかと感じています。

変わらなければいけないこと② ストックの展開とアーキビスト

ストックの展開という意味では、先ほどのシンポジウムと展示の例のように、そうした展開ができる発想に至るよう、自分たちがどんな報道をしているかを熟知した上で展開方法を考えられる役割――図書館の司書のような、アーキビストという役割が、これから必要なのではないかと考えています。

そして、そうしたアーキビストを窓口にして――今、いろいろなメディアがいろいろな情報を持っています。特に災害や事故のように、とにかく早く、確かな情報をより多く届けることが重要になる場面では、メディアが競争よりも協調する、コラボレーションして役に立つ情報を一緒に出していくことが、これから問われていくのではないかと考えています。

実際、シンポジウムの場面で他社さんと協力していろいろなディスカッションをする中で、「実はこんなことを一緒にやったらいいんじゃないか」というアイデアが出る場面は私自身も経験してきました。そういうところが、これからもっと広がっていくのではないかと思っています。

最後に宣伝ですが、今日お話しした事例も含めて、読売新聞オンラインの「ビジュアルラボ」に掲載しています。記者が有志で頑張ったり、独自の発想で頑張ったりしたものがいろいろありますので、記者が自分たちで集めた情報をもとにこんな試行錯誤をしているんだ、ということを少しでも感じていただけたら幸いです。

質疑応答

Q. 報道機関が良質なコンテンツを作っている一方で、若い世代の新聞購読率は低いと思います。あらゆる世代に情報伝達できるよう実施している工夫はありますか。

若い世代に届くように、というと、動画など今の若い世代の情報摂取スタイルに合わせた出し方の工夫には取り組み始めています。YouTube に解説を出すとか、ポッドキャストも始めてしばらく経ちます。伝達手段の多様化は、若い世代にも届くための方策として開拓中という感じですね。

(矢崎:スマホでビジュアルコンテンツを知った人や YouTube で知った人が、また別の媒体で見るという動線にもなりそうですね。)

Q. 分析ダッシュボードのご紹介がありましたが、そのデータから、ビジュアル記事の読まれ方と通常の記事の読まれ方に違いはありましたか。

大前提として大変お恥ずかしいのですが、先ほどツールの説明をさせていただきましたが、まだ浸透していないというのがあります。分析するマインドがまだ浸透しきっていないのが課題としてあります。

オンライン記事と紙面に出る記事の読まれ方の差について、きちんと分析したものには私自身出会ったことがありませんが、オンラインの方がより詳細に、全体的に反応が分かる。紙面で出た記事は届けっぱなしなので、お客様センターに来たクレームでもないとなかなか分からない。デジタルだと全体的に反応が分かるというところは、もっときちんと広めていかなければいけない点だと思っています。

Q. 公開されたビジュアルニュースで利用されたデータ、分析・作成のプロセス、それぞれの管理や保存のポリシーはありますか。

ぶっちゃけ、ないですね。そこも開発途上というところです。正直、作るところに全力投球というのがあるので、制作に使ったデータをどうするか、どこで管理して息長く残るようにするかは、これからきちんと会社の中で議論しなければいけない話だと思っています。

(矢崎:フェーズがあるのかもしれないですね。まずはボトムアップで、やる気になる人たちにパフォーマンスを発揮してもらうというフェーズかもしれない。)

まさにおっしゃる通りだと思います。まずは「こういうことができる」とやって手応えを覚えることが重要で、ただその後でもきちんと仕組み化することが伴わないと、人が変わったときに続かなくなるといったことが起きてしまう。ご指摘はまったくその通りです。

Q. 前半は ArcGIS など可視化がパッケージされたツールで、記者が取材してきたものを当てはめる形。後半は内製されたり、1ページにチャートも動画も解説も入ったりと、パターンが多様になる。「何でもできる」ことで、どこまでやればいいのか迷う面もあるのでは。ノーコードツールから始めて徐々に内製へ、という意識的なグラデーションはありますか。

意識しているかしていないかというと、正直「していない」と言った方がいいと思います。まずは簡単でとっつきやすいものでもリッチなものを作る、というところからですね。

ただ一番の懸念点は、外部ツールを使うとデータを外に出さなければいけないというところで、そこを解消しようということ。

それから「何でもできるから何でもやりたくなってしまう」のは、まさに結構な問題というか、**記者の性(さが)**だと思うんです。取材したことを全部出したくなるんですよ。特集面をご覧になる方はお分かりの通り、A3見開きの相当な分量をものすごいビジュアルで埋めたりする。ただ、その「てんこ盛り」状態が読む方にとって優しいかというと――それが良い場面ももちろんありますが、必ずしもそれだけが重要ではない。「ここはこういう局面だからこのくらいの量にしよう」といったパターン分けは、これから勉強しながら見つけていく話かなと思います。

Q. デジタルを活用した報道コンテンツの推進は、読者に新しい体験を届けられる一方で、記者の働き方を効率化する側面もあるのでは。

他社さんではそういう例があるとは聞くのですが、うちの会社で今見ている限りでは、その議論がセットになっているかというと、正直よく分からないところがあります。

ただ、「こういうこともできるんだ」と提示できていることには大きな意味があると思います。たとえば自己紹介で出したウクライナのコンテンツは、私が現地ウクライナにいながら、渡邉先生とスプレッドシートを共有して写真のリンクを送り、オンタイムでウクライナと、私がパリに帰ってからと、東京とで作業して1つのまとまったものを作れた。そういうやり方もあるんだと示せている面はあるのではないかと思います。

Q. トップダウンで工業製品のように高品質なコンテンツができてくるというより、これまでの「取材して、文章を書いて、写真を撮ってきて」というところと根っこがつながっているように感じました。その辺りはいかがですか。

そこは結構明確に意識している点かもしれないですね。自分たちが確証を持って集めたデータをどう使うかという意識は間違いなくある。プロとして情報を集めているからこそ、その良さを活かすためにはどうしたらいいか。それは大なり小なり、関わっている人はみんな意識している点かなと思います。「記者だからできるビジュアライゼーション」ということは意識されているかなと思います。

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