LT:矢崎 裕一/The Sigma Awards ― データジャーナリズムの世界的アワード

Data Visualization Japan Meetup 2021(2021年12月29・30日開催)における、矢崎 裕一によるLTです。Data Visualization Japan がメディアパートナーを務めるデータジャーナリズムのアワード「The Sigma Awards」と、その受賞作を紹介します。


Sigma Awards」というアワードがあるのですが、名前を聞いたことがある方はいらっしゃいますでしょうか。

データ可視化はいろいろな分野に適用されていますが、その中で報道・ジャーナリズムに適用される領域もかなりあります。その中のデータジャーナリズム系のアワードです。

私たち Data Visualization Japan はメディアパートナーという形で協力させていただいていて、そのこともあってぜひご紹介したいと思い、今回お話しさせていただきます。

アワードの成り立ち

このアワードが作られた目的は、「それぞれが多くの課題に直面しているので、お互いにシェアして学んでいけたらいい」というところから来ています。

母体になっているのは Global Editors Network という、編集者・ジャーナリストのグローバルなコミュニティです。ヨーロッパ中心のコミュニティで、2011〜2012年ごろからイベントという形で開催し、人が集まって講演や交流会があった。それを母体にして Data Journalism Awards が立ち上がりました。

これが8年ほど続いたのですが、その後、金銭的にうまく続かず活動自体が終了してしまいました。ただ、Data Journalism Awards の側は金銭的にも人員的にも問題がなかったので、「名前だけ変えて、せっかくなのでこのまま続けていこう」ということで今続いているのが The Sigma Awards です。

公式サイトを見ると「第3回」と書いてあって歴史が浅いように見えますが、実は前身の8年があるので、8+3で11年もやっていることになります。

メディアパートナー一覧には、Data Visualization Japan もロゴを掲載させていただいています。アワードのレセプションに行くと、世界中からエントリーした人たちや審査側の人たちが一堂に会するという感じでした。

規模

第1回(Sigma Awards として)の実績は——

  • 66か国から
  • 組織としては 300近くの報道機関からエントリー
  • 応募数は 510点ほど

受賞作品の紹介

データ可視化の観点から、いくつかの受賞作を紹介します。

① ニューヨーク・タイムズ ― 大気汚染の可視化

空気が汚染されているという状況をレポートするコンテンツです。ただ、空気の汚染はなかなか目に見えない。それを見えるようにしようというものです。

スクロールしていくと話が進んでいくのですが、特に甚だしいところ(例えばアメリカのサンフランシスコの状況)と、自分が住んでいる都市がどれくらいなのかを比べられるようになっています。東京ならこんな感じ、京都ならこんな感じ、と。

インドのニューデリーではチャートから突き抜けてしまうほどで、それによって大気汚染のひどさがより強調される表現になっています。

そして AR バージョンがあるんですね。公式アプリからしか見られないのですが、スマホアプリで見ると、アプリ越しに自分が見ている景色に、汚染の度合いを表すドットのアニメーションが重なって漂って見えるという演出になっています。ARを使った報道系の作品は、徐々に増えてきているという感じです。

② サウス・チャイナ・モーニング・ポスト ― スマホ首の可視化

香港のメディアです。ここの制作チームはいろいろなカルチャー・人種の人たちがコンパクトにまとまったすごいチームで、いろいろな表現が得意な人が集まっているのでコンテンツのトーンも多彩で、見ているだけでも面白いです。

受賞作は、街中でスマホを見ながら歩くときに首を傾ける、それが人間の体に結構負荷があるんだということを、あの手この手で説明しているコンテンツです。

表現の見せ方にバリエーションがあって面白い——写真の上に角度を重ねる表現、押していくとその分だけ首が下がっていく表現、そして動画コンテンツの上に注釈(白い丸)を重ねる表現。今回で言えば「スマホを持ちながら歩いている人の手元に注目してほしい」から丸がついている。動画作品の中でこうした注釈が上から重なっていくという手法も、突き詰めていくと面白いなという感じです。

③ ブラジル ― コロナ死者数を「自分ごと」にする地図

ブラジルでも多くの方が亡くなっていますが、国土が広いのであまり実感を持てない人が多いのではないか。では実感を持ってもらうにはどうしたらいいか、ということでインタラクティブな地図コンテンツを作った、という経緯のものです。

自分の住所を入れると、仮にそこが最初に感染者が見つかった場所だったとしたらという設定で話が進みます。右下のページを1つずつクリックすると、「最初の感染者が見つかった」→「1週間経って広がってきた」→「今日はこれくらい広がっている」と順番に見せていく。だんだん視野が広くなっていき、最終的に「今亡くなられている方の数は、この範囲がまるまる(人口として)なくなるくらいの規模なんだ」ということが示されます。

3Dの地図は最近使われることが多いのですが、ポイントは見ている人が自由に操作できるだけでなく、作り手が伝える順番をコントロールしていることです。

これまでも、テキストでストーリーが語られ、それを補強するために写真や動画といったビジュアルイメージが添えられることはありました。加えてデータが乗った地図があり、ストーリーの内容に合わせて「どの位置を、どれくらいの縮尺(ズームレベル)で表示するか」が自動的に調整されながら、説明を補完していくというコンテンツになっています。

これがすごく良かったということで、ワシントン・ポストがソースコードをフォークして自分たちのバージョンを作るという展開もありました。

過去の受賞作を探すには

Sigma Awards 分については公式サイトからリンクがあり、一覧で載っています。

前身の Data Journalism Awards のほうはサイト自体がクローズされてしまっているのですが、クローズ間際に個人的にスクレイピングしたものが手元にあります。サイトのタイトル、リンク、制作関係者、国名くらいの情報ですが、合算して公開し、見られるようにできたらと考えています。

応募について

このアワードは今まさに受付中で、応募することができます。

  • 締め切りは来年1月の第1週ごろ
  • 報道機関でなくてもエントリー可能
  • その年(2021年)中に発表された作品であること
  • 英語でなくても大丈夫
  • 賞金は全体で50万円ほどを受賞者で分配する形
  • カテゴリー分けは特になし。ただし組織の規模(35人より多いか少ないか)で大きい組織と小さい組織の分類はある

日本からも去年・一昨年とエントリーしてくださっている方がいらっしゃいます。その方向けに言うと、応募のルールや記載内容は変わっていません。

応募時に書く内容としては「端的に書いてくれ」「他の人はここから何を学べると思いますか」といったことを問われます。少し頭を悩ませるところではありますが、ぜひトライしてみていただけたらと思います。

駆け足になりましたが、ご紹介させていただきました。

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