Data Visualization Japan Meetup 2025「データ可視化本 著者が語る」(2025年12月29日オンライン開催)における、藤井 亮介さん(藤田医科大学 医療科学部 講師)の講演です。『超入門!Rでできるビジュアル統計学』の著者として、執筆の経緯と書籍の内容を紹介します。
こんにちは。藤井と申します。本日は『超入門!Rでできるビジュアル統計学』の著者として、その執筆の経緯や書籍の内容についてご紹介できたらと思います。
あいにくリアルタイムでの講演が都合上叶わず、オンラインでの参加をお許しいただきまして誠にありがとうございます。実は私は医学研究者で、本日の会の参加者の方々はほとんどデータ可視化の専門家ということで、このようなお話の場をいただくのは少し恐縮なのですが、書籍の内容を順番に紹介していきたいと思います。
自己紹介
1991年に愛知県岡崎市で生まれ、その後岐阜県に引っ越して、高校までずっと岐阜県で過ごしました。藤田医科大学の医療科学部を卒業後、5年間名古屋大学で勉強して博士号を取得しています。
2018年に藤田医科大学の助教として着任し、2021年からイタリアでポスドクを2年間。2023年10月に藤田に戻り、2024年4月から講師を務めております。
専門は疫学研究
私の専門は疫学研究と呼ばれる分野です。医学の中でもいろいろな分野がありますが、人の集団を集めて研究する分野になります。
どんな研究かというと——人を1万人とか10万人ほど集めます。その方々の生活習慣や血液検査のデータを使って、例えば野菜摂取が多い集団と少ない集団の2つに分け、その人たちが将来どのような疾患にかかるかを10年、20年と追跡していく。最終的に、野菜摂取と例えば心臓病による死亡がどのように関連するかを統計学的に明らかにする学問です。
ですので、統計が身の回りにあって数値を扱う研究分野ということになります。
なぜ可視化の本を書くことになったか
最初はとても些細なことから始まりました。
学生時代、大学院生の頃に R を使ったブログを書いていました。当時は生成AI や LLM のようなものがなく、コードを書くのも一苦労という時代——10年ほど前の話です。自分で書いたものをアウトプットする練習も含めてブログを書いていました。
それを見た共同研究者の方から「R でグラフの本を作りたい出版社があるんだけど、藤井君どうか」とお声がけいただき、ご紹介いただいたのが2020年10月、コロナ禍の時期だったと記憶しています。
執筆のモチベーション
医学論文というのは、本当に日々すごい数と規模で更新されていく分野です。そのような状況で、自分の論文をいかに読んでもらうかは非常に重要なことだと当時感じていました。ですから、美しい図表、目を引くような図表が非常に重要だろうと思ったのです。
Excel にまとまっている解析結果を見るのがいいか、グラフに表した方がいいか——今日ご参加の方はもちろんグラフだろうと言われると思います。正直、グラフを使う場面と表を使う場面はそれぞれ一長一短なのですが、やはり目を引くことが非常に重要なのだろうと当時の私は思っていました。
同時に、可視化の勉強を進めていくと、やはり美しい部分にフォーカスされていることが多い。しかし**医学論文・アカデミアにおける可視化は、どちらかというと「正確に、美しく」**というイメージを個人的には強く持っていました。
可視化の Tips がよくまとまっている書籍は当時からあったと思いますが、その中で正確に、情報を漏れなく伝えること、逆に「可視化ではなく表でいいんだよ」ということも含めて本にできたらいいな、と考えていたことを記憶しています。
本の構成
まず R について紹介し忘れましたが、基本的にはプログラミング言語の一種で、統計解析に非常に長けています。最近は Python もかなりユーザーが増えていますが、Python と同じようなイメージで、統計解析から可視化まで幅広い「パッケージ」(いろいろな処理ができる関数がまとまったもの)がある統計ソフトウェアです。
無料で使えること、そして当時から情報が多いことが非常に大きな利点でした。
- パート1:R をどうやって使うか
- パート2:質的変数のグラフ(棒グラフ、円グラフなど、カテゴリーを示すグラフ)
- パート3:量的変数のグラフ(血圧、体重、BMI のようなものをどう表すか。1変量から多変量まで、「こういう組み合わせの時はこれがいいのではないか」)
- パート4:地理空間データの可視化
当時はとても調べやすい、一覧性のある目次だったかなと思いますが、一方で**「型にはめるような目次」になっていたかもしれない**というのは少し反省点であり、仕方ないところかなとも思っています。
書籍の中身
最初にデータタイプごとに適したグラフを紹介し、サンプルデータも配布しているのでその構造を一部紹介するところからスタートします。
箱ひげ図であれば「どんなグラフか」という本当に基本的なところから説明し、ちょっとした小話を入れたり。「実際にグラフを見てみよう」ということで、サンプルデータを可視化するとこうなりますよ、と実際に見ていきます。
見た後には「注意」というポイントを設けています。例えば3つの連続量について、棒グラフ・箱ひげ図・ジッタリングしたプロットを比べてどんな印象になりやすいかを見たり、注意ポイントを取り上げて紹介する形にしています。
本書の一番の強みは R のコードがついていること
最近はコードを LLM が書いてくれるので「必要ない」と言われてしまうとそうかもしれません。ですが、基本的な部分を理解しておくことは非常に重要です。LLM が何を言っているのか、その共通言語を持つ上でこれくらいの基本を勉強しておくといいのではないか、と。
最近は大学院生以降で、ちょっとした解析をこれからやっていきたいという人にとって基礎的な行動になるのではないか——「生成AI とうまく付き合うための入門書」として、自分の周りには紹介しています。
本の特徴
① 記述統計をほぼ網羅:いわゆる推測統計と呼ばれる回帰分析などの難しい話は全く入っておらず、手にしたデータをどうやって可視化するかを網羅的に解説しているところが本書のいいところかなと思っています。
② 科学コミュニケーションの可視化として、美しさだけにフォーカスしない:どうやったら正確に言いたいことが伝えられるかというところにも触れています。
③ 無料のソフトウェア R を使っている:大学関係者以外の方でもオープンアクセス性が高い。高いお金を払って統計ソフトを買える環境にいない人でも使えます。個人的には ggplot2 というパッケージを使うと再現性の高いグラフが描けるので気に入っています。
④ 第1版はモノクロでも見やすいデザインにこだわった:本書はすでに第2版まで出ていて、第2版ではカラーになりました。第1版をお持ちの方は「そういう意図で作ったんだ」とご理解いただけると嬉しく思います。
おわりに
教育者の端くれとしては非常に嬉しいことに、シリーズとしてたくさん出させていただいています。今日ご説明した『超入門!Rでできるビジュアル統計学』の第1版・第2版、そして解析編——回帰分析や生存時間解析といった少しアドバンストな解析を加えた可視化の本も出しております。
このシリーズで、主に大学ですが多くの図書館に採用いただきまして、本当に嬉しい限りです。些細なきっかけから始まったのですが、このような本を書いて良かったなと思います。
ご興味がありましたら書店で手に取っていただいて、気に入ったら購入いただけると大変嬉しく思います。購入いただいて「ここをもう少し改善した方がいい」ということがあれば、遠慮なく教えていただけると嬉しいです。
本当に今日は貴重な機会をいただきましてありがとうございました。年の瀬ということで、皆さん良い年をお迎えください。ありがとうございました。