Data Visualization Japan Meetup 2025「データ可視化本 著者が語る」(2025年12月29日オンライン開催)における、山辺 真幸さん(一橋大学大学院・慶應義塾大学大学院 特任講師/UMT株式会社 代表)の講演です。監訳を担当した『データビジュアライゼーションのためのデザイン原則』の紹介と、「トランスフォーメーション」というキーワードをめぐる考察をお話しします。
山辺と申します。今回、可視化の本の著者が語るというイベントでお声がけいただきましたが、私は正確に言うと著者ではありません。『データビジュアライゼーションのためのデザイン原則』(マイナビ出版)という本の監訳——専門家の目で見ておかしいところがないかという訳のチェック——を担当させていただきました。
今回の講演は「トランスフォーメーション」ということを1つのキーワードにしています。「トランスフォーメーションとは何ぞや」という感じだと思いますが、それは後で深掘りするとして、まずは自己紹介からしたいと思います。
自己紹介
2つの大学院で勤務しております。一橋大学大学院ソーシャル・データサイエンス研究科(2023年に開設した新しい研究科)と、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科(今年から参加)です。どちらでも情報化・データビジュアライゼーションを中心に研究をしています。
もう1つは UMT株式会社という会社をこの8月に作って、データ可視化に関するさまざまなご依頼やデータ分析をお手伝いしています。
私はずっと大学で研究をしてきたわけではなく、もともとは UI デザイナーでした。デザインについてはいろいろなイメージがあると思いますが、私はやはり大規模なデータの可視化もひとつのデザインであり、そのデザインを通じて大規模データから導き出された知見や気づきを、研究者以外の方にも広くシェアする、理解に近づけるということが興味の対象になっています。
もともとデザイナーだったこともあって、科学館やテレビ、デジタルメディアでデザインされた可視化を見せる仕事もよくやっています。インフォグラフィックスやダッシュボードなどデザインされたデータはたくさんありますが、私の場合は非常に大きなデータ——気象現象や、人間では見ることができないスーパーコンピューターで計算されたシミュレーションのデータなど、研究者やプロユースの方が使うようなデータをいかに可視化して、研究の最前線で今起きていることを伝えられるか、というところが研究の対象になっています。
『データビジュアライゼーションのためのデザイン原則』の紹介
原著はデジレ・アボットさんが書かれた英語の本で、翻訳は長尾さんが担当されました。恥ずかしながら私はアボットさんのことを存じ上げず、この話が来た時に初めてこういう本が出ていると認識して、急いで読んでみたというのが正直なところです。
長尾さんも経験豊富な翻訳者で、私のところに監訳の依頼が来た時にはすでにかなり精度の高い訳が出来上がっていると言ってもいい状態でした。ですので、何か私の成果のように伝わると申し訳ないのですが、もともといい著作ですし、日本語訳も非常に自然で、初見でとても読みやすいというのが印象でした。
3部構成
- 第1部:基礎知識 — 人はどのようにして情報を認識するか(認知科学的な話)、データに関する知識
- 第2部:デザイン原則 — 色、タイポグラフィ、良いチャートの作り方、インタラクションデザイン
- 第3部:実践
第1部・第2部は「知っていれば実務に役立つ」知識で、可視化をよくご存知の方には「こういう内容の本は割と多いかな」という感じかもしれません。しかし第3部の実践のところがキラリと光る——ここに私はすごく感じるものがあって、「この本はいい本だな」と思ったという次第です。
第1部・第2部の読みどころ
認知の話:形からどのようにして意味を読み取っているのか。可視化の本では定番の話ですが、1つ1つの認知の仕組みについてかなりのボリュームで書かれている印象がありました。
色:実際に困るのは「カラーパレットをどう作るか」「色で何かを表現する時にどんなマッピングをしたらいいか」です。レインボーカラーにすると強調されすぎてしまうこともある。色相だけでなく明度や彩度、透明度もうまく使うことで、散布図で密集して重なって見えなくなるところをどう回避するか、といったこともすごく書かれています。
特にインクルーシブデザインについて非常に深く書かれているのが良かった点です。色の識別には個人差があり視覚特性への配慮が必要ですが、そのための知識、文献、社会の動向がよく書かれていました。
この本は全編カラーなのも良い点です。可視化の本で全部カラーでないと「ああ……」という感じがあるのですが、挿絵1つ1つもデザインされているものが多く、見ていて楽しい・気持ちいいというのが印象に残っています。
タイポグラフィ:サンセリフ、セリフといった文字の形の特徴、可読性のいい書体。少し詳しいなと思ったのは桁の揃いです。これがうまくいく書体とそうでない書体、といったデータに特化したタイポグラフィがすごく書かれていました。可視化の本でここまでタイポグラフィを詳しめに書いてある本は、ちょっとないかなという印象です。
良いチャートの作り方:うがった言い方をすれば、やはり記憶に残るビジュアライゼーションであるかどうかが、良し悪しを判断する1つのポイントになるのだろうと思います。単調なグラフではなく、見る人の記憶や印象に残して、欲を言えばそこから行動や意識を変えてもらう——それがビジュアライゼーションの1つの社会的な使命だと思います。
文字の大きさ、色の使い方、余白の取り方、レイアウトの仕方が大事なポイントなのだということが、図入りでよく分かる。これぐらいレベルが高くて詳しく書かれているものは珍しいのではないかと感じました。
地図:「人数と地域性は一緒にはできない」「土地に色をつけると広い面積のところが目立ってしまい、伝えたいメッセージがうまく伝わらない」——可視化を実務で経験された方なら一度は聞いたことがある話ですが、こういう問題をこうすれば解消できるというケーススタディが非常によく書かれています。同じデータでも見せ方の違いで印象がかなり変わる、ということが図入りで解説されています。
インタラクションデザイン:マルチデバイスへの対応です。PC で見るのかスマホで見るのか、マウスでクリックするのか指で操作するのかで、まったく違う経験になる。ビジュアライゼーションのデザインツールはマウス操作を前提に開発されていると思いますが、指で触ったり小さいモニターで見せる時の工夫に触れている書籍は少なく、この本の特色の1つかなと感じました。
監訳を引き受けた理由
原著が出たのが2024年4月なので、日本語版の刊行まで結構すぐでした。実際スケジュールはかなりタイトで——監訳のお話をいただいたのが6月末、刊行予定が8月末と書いてあったので「これは厳しいな」と実は躊躇しました。
それでも、とりあえず原著を読んでみますということで中を読んでいったところ——日本で出版されている他の可視化の書籍に比べてだいぶ深掘りされていること、そしてアボットさんがダッシュボードやデータビジュアライズをきちんとお客様に納品する仕事を十分にやっているという印象があったんですね。
理論的なところから後半の実践まで、ちょいちょい人間味が溢れる現場の苦労——「この辺は難しいんですよね、でも頑張りましょう」といったことがすごく書かれている。理論だけを合理的・簡潔に書いていく教科書とはちょっと違う、「あ、なんかそういうことあるよね」という**やっている人間だからこそ分かる“あるある感”**が随所に見られて、読み手に共感を与えるものだなと。その理論と実践のバランスの良さを感じました。
基礎から応用まで広くカバーされているので、すでに何冊か可視化の本を読んだ方でも現場感のある言い回しは読み応えがあるし、初めて読む人でも基礎を飛ばさずに書いてあるので楽しめる。そういった意味でもいいなと思ったのが、お引き受けした理由です。
第3部が独自 ― ダッシュボードを納品するまでの物語
第3部はダッシュボードを設計して納品するまでの話がずっと書かれているんですね。笑いあり涙ありと言っては何ですが、苦労話的なことが生々しく書かれているのが面白いと思いました。
もちろんプロセスについて書いてある本はたくさんありますが、たいてい割と抽象的にスマートに、「こういうことをやった後にこういうことをやりましょう」とフレームワーク的に書かれている。それとは言ってみれば真逆です。1つのケースに寄り添って書いていくので客観性・抽象性はないのですが、生気感がすごくある。これがなかったら引き受けていなかったかもしれない、というくらい印象に残っています。
ケーススタディの設定
仮想の話です。あるホテルグループと、データビジュアライザーである主人公が契約して、そのホテルの客室清掃部長のためにダッシュボードを作ってあげるという設定です。
ホテルグループには3つのホテルがあり、客室清掃部長は客室の予約データをシステムから見て、どの客室を誰が掃除するかというシフトを決める仕事をしている。向こう30日間の予約状況を見てスタッフを配置するシフトを組む——そのためのダッシュボードを考える、というストーリーです。
調査・立案フェーズ:要件を収集し、ステークホルダー——実際に使うのは清掃部長なのか、掃除するスタッフも使うのか、このシステムを決裁して「これで行きましょう」と言ってくれるのは誰なのか——を広く洗い出して情報を集約していく。
主人公はホテルのことに全然詳しくないわけです。当然ですが。それでも、毎日その業務をしている人たちがどんな方なのか、システムの中にあるデータ・使えるデータはどんなものなのかを、「これでお願いします」と渡されるのではなく自分で情報を取りに行って聞き出していく。関係を築きながら必要な情報を集めていくのが立案のフェーズです。
だから素材を渡されて計画するデスクワークではなく、いろいろなミーティングをする。ミーティングの時にどんな態度で臨めばいいか、どういう話をしたらいいかまで書かれているのがすごく面白いなと思います。
デザイン・設計フェーズ:プロトタイプを作って、細かく細かく清掃部長に意見を聞く。設計してデザインして「できました」ではなく、作りながらヒアリングをしていく。
開発フェーズ:スタートしてから最後にチェックを受けるのではなく、途中途中でどう合意を形成していくかというやり取りが書かれています。
3つのフェーズはウォーターフォール的に1つずつ進むのではなく、ぐるぐるとループしている。計画して構築してフィードバックをもらう、を繰り返しながら関係性を深めていく。いいものができるのはもちろん、相手がそのプロジェクトに対してどんどんポジティブになってくれる、自分の味方になってくれるというプロセスがよく書かれています。
もちろんこれは物語なのでうまくいくのは当たり前ですが、実際のプロジェクトでは協力的でないお客さんもいるし、難しいことがいろいろあるわけです。
本文からの抜粋ですが——作りかけのものを他人に見せるのは抵抗があるかもしれないし、一生懸命やったものに批判的なフィードバックを受けるかもしれない。けれど、そうしたやり取りこそが、仕事の成功に必要な情報であり、本当に相手が求めているものをクリアにしていくプロセスなのだ、ということが非常によく書かれています。
聞けば「そうだよね」という話ですが、こういうプロセスはやはり勇気がいることだし、トラブルになったら嫌だ、ひっくり返されたら嫌だという思いもある中で進めていくことなんだ、とはっきり書かれている。データにも詳しくない自分が、対話を通じてデータの背後にあるものやエンドユーザーが見出す意味を掬い上げていくプロセスが、非常に共感が持てるところだなと思っています。
また、著者は紙でのスケッチによるプロトタイピングを推奨していました。実装できるか確かめるために BI ツールを使ってフィージビリティを確認することもあるけれど、紙のプロトタイプをたくさんやることで、書くことによって自分が気づかなかったアイデアを思い出すこともある、と。日の目を直接は見ないかもしれないものを挙げているのが印象的でした。
そしてこの過程で大事なのは、データベースには膨大なデータがあるけれど、話を聞いただけでは分からないということ。プロトタイピングをして反応をもらうことで「いや、この情報はいらないんだよ」「私はここだけをすごく気にして見ている」といった重要な示唆が出てくる。そうした対話の中で取捨選択をしていくところが、非常に印象に残っています。
トランスフォーメーションとは
ここで、今日のタイトルにある「トランスフォーメーション」という言葉を話題として出します。私はこの監訳作業をしながら「あ、これはトランスフォーメーションだな」と思っていたんですね。
トランスフォーメーションとは、アイソタイプ——よく言われるピクトグラムを使ったビジュアライゼーション、あるいはその原型となったアイソタイプ——を世に広めた実践者たちの言葉です。ウィーンの統計学者・社会科学者・哲学者であったオットー・ノイラート、そのパートナーとなったマリー・ノイラートさん。彼らはチームで可視化を作っていたわけですが、デザイン(実際に見られるもの)とデータの間にある、数から具体的な形を呼び起こすための変換を「トランスフォーメーション」と呼んでいました。
トランスフォーメーションとは、言葉や数値、データから本質的な事実を引き出して画面の形にするために発見すべき方法であり、データを理解し、専門家からすべての必要な情報を得て、公衆に伝達する価値のあるものを決定し、いかにそれを可能にし、いかに一般的な知識や他のチャートですでに用いられている情報と結びつけるか、ということ
抽象的に書かれていますが、固定されたデザインに行き着く前に、データの持ち主やデータに詳しい専門家から必要な情報を集めてきて、最後に情報を受け取ってほしい人に対して価値のある部分を決定する。要するに必要ないものを落としたり、必要な形に変えたりする。これがトランスフォーマーの仕事である、と語られています。
アイソタイプの成り立ち
ピクトグラムは「アイコンを使っているもの」と誤解されがちですが、これは後からつけられて定着した呼び方で、そもそも彼らは **ISOTYPE(アイソタイプ)**と呼んでいました。
アイソタイプが作られた頃は、資本主義と社会主義という大きなイデオロギーの中で経済が揺れ動いていた時期でした。経済は目に見えないので、日々労働している一般の人が、世界の工業・農業・人口といった大きな数字で見る社会の動きの中で自分がどういう立ち位置なのかを理解することは難しい。そこを、言葉や数式、数学の知識を超えて、経済についての理解を広く一般の人に提供しようと考えられた。それが源流のアイデアです。
だからアイコンを使うのは「指で数えられる」ことが大事なんですね。グラフのように長さで比較するのではなく、「人1人が1万人」「車1台で1000万台」と数えることで比較が簡単になる。いろいろなデータに使えるよう文法化して厳格にルールを作り、一度ルールを覚えれば誰でも読み解きができるというコンセプトで作られていました。
アイソタイプは3人のチームで作られていました。
- オットー・ノイラート:経済とデータに精通し、人々にどんな情報を与えたいかという大きな方向を見定めるディレクターのような役割
- ゲルト・アルンツ:版画家で、最終的なアイデアを図案化するデザイナー
- マリー・ノイラート:トランスフォーマー。数学のバックグラウンドがあったと言われています
アイソタイプの根本的なアイデアは「知識の民主化」です。そしてトランスフォーマーは「情報の公共信託者」というやや堅苦しい表現で説明されています。要するに、すべての情報から伝える時に必要な情報を取捨選択して形に落とし込む、そのアイデアを考える役割です。
専門家(こういうデータでこういうことを伝えたい)と、芸術家である版画家の橋渡しをする。橋渡しとは、元のデータから抽出すべき情報と、省略してしまう情報を選定することです。
このプロセスはあまり言語化されていません。ノイラート自身が「トランスフォーマーは経験だから、こうしたらできるというフレームワークではない」と語っているくらいです。データに精通していて、かつ伝えたい相手がどういう人々なのかにも精通していなければならない。だからこそ、先ほどの第3部に書かれていた実践知というものが、今も昔も非常に重要な役割で捉えられるのではないかと思いました。
トランスフォーマーの仕事の例
日本のノイラート研究者の論文から図をお借りしていますが、デザイナーである版画家に落とす前にトランスフォーマーが間に入り、統計学者や地質学者などさまざまな学者とデザイナーの間で、科学的な知識の中からデザインに必要な部分を選択してラフスケッチを書くのがトランスフォーマーの仕事だったと述べられています。
では実際にどういうものがトランスフォーマーの成果なのか。分かりやすい例が人口ピラミッドです。
左側は通常の人口ピラミッド。上に高齢の方、下にいくほど若い人。赤い部分が労働生産人口(働いて価値を創出する人口のゾーン)、上の青と下の緑は就労できない人たち——まだ若すぎるか、引退している、社会にとってケアされるべき人たちです。
右側は同じデータですが、人口ピラミッドにするのではなく、労働できる人を下に置き、労働できない人を上に並べる。すると「働ける人と働けない人のバランスが年々どう変化してきたか」が伝わります。
同じデータで同じことを言っているけれど、人口構成のスナップショットを見せたいなら左、労働人口のバランス変化を伝えたいなら右。どういうコンテキストで使うのかをよく考えるのがトランスフォーマーである、と言えるのだろうと思います。
現代におけるトランスフォーメーション
これを現代的に解釈すると、トランスフォーメーションはどこで必要になっているのか。(ネタばらしすると、ChatGPT と壁打ちしながら考えました。)
今は版画家さんは必要ないですし、可視化のツールもいろいろあって、下手すればワンクリック・ツークリックで描画できてしまう。Python や Tableau でデータからの描画は一瞬でできるかもしれません。
しかし**「意味の設計」というところは、まだまだ自動的にはできていない**。そこから、正確だけれど何かその意味が読みづらい、何を伝えようとしているのか分からないグラフが生まれつつある。ツールで描画は一瞬でできるけれど、トランスフォーメーションがあまり考慮されていないと、「正確だけれど、なんだか何が言いたいの?」というものが結構できてしまうのかなと感じています。
BI ツールを悪者にするつもりはないのですが、やはりそこで意味の設計はできない。データを直接ビューに収めていけばできてしまう。けれどそこからどんな意味が読み取れるのかは、データの専門家と対話をしなければ見えてこないし、使う人がどんな分析をしたいのか、見た人が何に興味を持っているのかが分からないと、図が書かれただけに終わってしまうのではないかと思います。
現代のトランスフォーマーに必要な能力
- データサイエンティストのような分析・検証能力。伝えるべき核心的な数値への凝縮ができ、構造化もできる
- インフォメーション・アーキテクト。文脈に沿った物語的なレイアウトができる
- UX デザイン。可視化からユーザーが実現したいことを理解し、アクションやインタラクションまで含めて作れる
ただ、これら全部できる人はそういないと思います。だから大切なのは、異なる職能の人たちが「トランスフォーム」という言葉を意識しながら、データの専門家やエンドユーザーにアクセスして、時には泥臭く情報を引き出してくること。描画のところだけ自動化されても、意味の豊富なビジュアライゼーションは作れないということが、現代でも言えるのではないかと思います。
自分の経験に置き換えると
コロナウイルスのゲノムデータから、その広がりを3次元的・地理空間的に可視化したプロジェクトでも同じでした。
もともとゲノムのデータ自体を全然知らなかったのですが、「こういう見せ方でこう可視化できる」「近縁関係が見える」「子孫が多いところが太い」というすでにあるビジュアルのマナーをよく汲み取り、専門家がどういう使い方をしているのかを聞く。しかし最終的にこれを見せる人たちはそんなに知識がない。
元の形をどう変換していけばいいのかをプログラミングしながら、先ほどのホテルの話とまったく同じでプロトタイピングしながら専門家の意見をいただき、「ここがこう見えるなら、この色を変えてみよう」「見え方が複雑すぎるので、どうやって複雑性を抑えるか」と進めていく。
複雑性を抑えるとは、情報を捨てていくことなんですよね。どういう情報なら捨てていいのか。捨てすぎると科学的に嘘になってしまうので、嘘にならないレベルで大事なところを残して見やすさを出すにはどうしたらいいか——本当にトランスフォーミングだったなと思っています。
こうしたビジュアライズで自分も感じるのは、必要になるスキルが非常に多岐にわたることです。私が必要だと思っている3つの力は——
- 実装する力
- 造形する力(タイポグラフィや色の使い方といった造形力)
- データを分析して元データから意味を抽出する力(データサイエンス能力)
もちろん全部1人ではできないので、協力していただける方と一緒にやっています。ただ、「こういうことが必要だよ」という形式知としていろいろ勉強はできるけれど、実践していろいろな人と仕事をしてみないと分からないことがたくさんあった、というのが自分の経験の中で思い浮かぶところです。
専門家・ドメイン知識のある人とのコミュニケーション、最終的に見る人がどう触るか・何を考えるかを探索的に探っていく。そこが非常に実践的であり、それを蓄えていくことが良いトランスフォーマーに近づくことなのだろうと感じています。
まとめ
本書については、特に第8章(実践)——さまざまな形式知をきちんと学習した後、最後にそれを仕事や社会に生かしていくところで必要な実践知を得ていくプロセスが印象に残りました。
そしてトランスフォーマーという役割は、現代でも引き続き必要になっていると言えると思います。
現代ではそこがデータサイエンス・IA・UX の3領域にまたがっている。もちろん全部できる人は珍しいかもしれませんが、2つくらいをお互い共通領域として持っていると、とても新しい仕事の仕方ができるのではないかと思います。
こうした3つの領域から対話を通じてトランスフォーメーションを実現する。結局「このチャートは誰のどんな行動を変えたいのか、どんな意味をもたらしたいのか」というところにつながっていく、新しいデータビジュアライゼーションの仕事の作り方につながっていくのではないか——そんなことをぼんやり考えました。
ぶっちゃけ、矢崎さんからお話をいただいてから「こういうことを考えてみたい」と思ったところが正直なところなのですが、こんなことを考えました。